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2022年10月、私は台湾の高雄へ行きました。友人のアーティストの展示を見るためで、そのとき香港人アーティストのアニー・ワンさんとも会いました。「久しぶり!」と言われて、一冊の本を私にくれました。
アニー・ワン『今日の糧を我に与えん』香港バプテスト大学視覚芸術アカデミー視覚芸術研究・発展センター 2022年 表紙
この本は、越後妻有トリエンナーレの1つの展示会場である「香港部屋」で、アニーが展示した時の記録集です。わぁ!
2019年は、越後妻有トリエンナーレの年ではありませんが、香港部屋は2018年にオープンし、2年目である2019年、アニーは香港代表に選ばれました。私がこのプロジェクトの話を聞いたのは、いつだったかはっきりと覚えてませんが、私は<research> Japan(6) に書いたように、越後妻有トリエンナーレのエリアに住むミライとその家族と関わりがあります。アニーの作品は、越後妻有の地元の人たちに、食べ物についての話を聞いて、それを元にイメージを陶で形にしていく、という内容でした。そこでミライとその家族に、「香港人アーティストが協力者を探してるから、手伝って!」とお願いしました。
ミライ自身もインタビューを受け、ミライの家にたまたま来ていた農家の人は別の日にインタビューを受けることになり、さらに、といった感じで、2019年4月のアニーはリサーチをしていました。
ミライの家でインタビューの後、2019年4月3日
そして私は、8月10日のオープニングにミライ一家と一緒に見に行きました。例えば、大病の後だったミライはで、入院中に「ほかほかの白いご飯」が食べたかったとインタビューで話しました。するとアニーは、「お茶碗に盛られたご飯」をパステルカラーの単色を使った陶で表現していました。そういう作品が机の上にたくさん並べられて、インタビューの話だけでなく、自分の日常や思い出も共有されていくような空間でした。
私が台湾でこの展示カタログをアニーからもらったとき、そのすべてをざーっと思い出しました。そして本を開くと、雪深い越後妻有のエリアが思い出アルバムのように載っています。同時に私が気になったのは、そこに書かれた言語でした。
アニー・ワン『今日の糧を我に与えん』香港バプテスト大学視覚芸術アカデミー視覚芸術研究・発展センター 2022年 奥付(部分)
この本は3つの言語が使われています。アニーは香港=広東語、展覧会の場所=日本語、みんなが分かる=英語。アジアの国や地域は、地理では近いですが、言葉はそれぞれ違います。見て分かるように、文字もまったく違います。でもアニーと彼女の作品は、国境を超え、言葉を超えて、香港と越後妻有を繋ぎました。本当にそのことをかみしめることができるのが、この本です。